どうしてリツイートすると訴えられるのか

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この記事について

 この記事は、「どうしてリツイートすると訴えられるのか」です。

 経済産業調査会の知財ぷりずむの11月号をぱらぱらやっていたら、リツイート事件が載っていたのですが、ツイッターを使ってる人は結構関係がありそうなので、理由を超ざっくりまとめておきます。

 

 なお、分かりやすさの都合で、専門的になってしまう部分は、あえてざっくり分かる方向で大雑把に書いています。

 興味がある方は、その手のサイトも当たってみると面白いと思います。

 

リツイート事件とは

 ちょっと前に話題になったリツイート事件とは、ツイッターに上がっていた写真をリツイートしたら、訴訟になって最高裁まで行って、その判決がでたっていう話ですね。

 登場人物としては、下記のような感じになります。

 

登場人物

  • 原告(訴えた人):もともとの写真を撮って、自分のツイッターにアップした人
  • 被告:ツイッター社
  • A:当該写真をいわゆるパクツイした人
  • B:パクツイをリツイートした人(複数)
    • この人の扱いが論点

 

訴えの目的

 訴えの目的は、超ざっくり書くと、被告は、A、Bの個人情報を開示しろと言うものです。

 ツイッターのユーザーは、基本的にお互い匿名なので、相手の個人情報が分からないことによります。

 

 それで何が楽しいのと言えば、個人情報の開示を受けた原告は、例えば、Aを著作権違反の損害賠償とかで訴えられるようになるので、一応は目的のある裁判となります。

 

展開

 どうも揉めに揉めたらしく、終審である最高裁判決まで出されたようで、この訴訟は、結構大きな問題と判断されたようですね。

 ちなみに、高等裁判所まではともかく、最高裁判所への上告は、よほどの理由がない限り却下されるので相当凄いです。

 

最高裁判決

 超雑に言うと、パクツイをリツイートしたBも氏名表示権の侵害と言うことで、ツイッター社から原告へのBのメールアドレスの開示が認められるという判決になりました。

 パクツイしたAについては、当然に色々著作権侵害なのは当たり前なので、ここでは省略します。

 

 なんでリツイートしただけなのに侵害になるのかと言うと、それは、ツイッターのリツイートの仕様が問題になっているようです。

 具体的に、ツイッターで例えば画像をリツイートした場合は、、画像の上下がトリミング(切り取られた)されたサムネイルの状態でツイートとしてタイムラインに並ぶと思います。

 

 その画像をクリックすると、画像全体が表示されるというあれですね。

 じゃあ例えば、その画像の一番下の方に著作権者表記があったとすると、その部分は、サムネイル、つまりリツイート者のタイムライン上には表示されないことになります。

 

 ここで、氏名表示権とはなんぞやという話になります。

 氏名表示権とは、超雑に言うと、著作物を創作するともれなくついてくる、著作者人格権という名誉権みたいな権利の一部です。

 

 著作者人格権は、良く金銭トラブルに発展するいわゆる著作権とは別のくくりの権利で、訴えらえてもそこまで高額になる話は聞いたことがないやつです。

 

 氏名表示権の権利の内容は、自分の著作物に著作者名を付けるか、付けないか等の権利です。

 まあ、例えば、写真を撮ってツイートするときに、その写真内に名前を入れるか、入れないかを選べるような権利です。

 

 今回の原告は、この権利を行使して自分の写真に名前を入れたのですが、ツイッターの仕様の都合でサムネイルでは表示されないままリツイートされて行ったことになります。

 すると、最高裁では、氏名表示権の侵害じゃん、ツイッター社は、リツイートした人のメールアドレスを、原告に公開してねとなったようです。

 

 なお、今回は、理解のため、リツイート者であるBに関係する著作権以外の話は、超バッサリ省略しています。

 

どうすれば訴えられないのか

 じゃあ、朝から晩までツイッターに張り付いているような人たちは、どうすればリツイートをしても訴えられないかと言う話になります。

 今回の最高裁判決の範囲では、パクツイかどうか分からないツイートで、著作権者表示がある画像のあるものはリツイートしない、と言うのが方策になると思います。

 

 この辺は、具体的には、バズっていても、身元が怪しくて、著作者表記のある画像が含まれているツイートのリツイートは、ちょっと考えるみたいな感じになるのではないでしょうか。

 著作権者表示のある画像が含まれているツイートのリツイートは、企業や、知り合いに限るとかでもよいのかもしれませんね。

 

 理由は、この国の場合、最高裁で判決が出てしまったものは、大体同様の事案の訴訟では丸ごと引用されて同じ結果になってしまうためです。

 もっとも、同様の事案に当たるかは、普通の人には、判断が難しいロジックで判断されるので、同じかなーと思っても、必ずしも該当するわけではないのですが。

 

 なお、著作権者自身の画像入りツイートへのリツイートに関しては、今回の判例の射程外です。

 

まとめ

 なんか細かいリツイート者の他の著作権に関する侵害については触れていなかったりと、続く判例が出そうな感じがします。

 パクツイのリツイートは、もう侵害でいいじゃんみたいに主張している人もいるようで、ちょっと注意した方が良いのかもしれませんね。

 

 ちなみに判決文の原文はこちらになります。

 

〇裁判所公式:

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/597/089597_hanrei.pdf

 

 また、最高裁の判決は、ツイッター社側の上告の棄却判決になっており、知財高裁の判決結果(メールアドレス開示等)が維持される感じになっています。

 実質的な判決結果を確認する場合の知財高裁の判決については、こちらになります。

 

〇裁判所公式:

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/761/087761_hanrei.pdf

 

 

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kuroneko

とある企業の知財部で働く一応弁理士です。 国内特許系メインの日々の業務とか、試験対策ネタとか書いています。 受験時代は某L社系列の某B,M講師をメインに習っていました。 Copyright (C) 2010 - 2017 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
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