国内の拒絶理由対応関係おぼえがき(2022)。

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この記事について

 この記事は、『国内の拒絶理由対応関係おぼえがき(2022)。』です。

 年末年始で、久しぶりに昔の研修資料とかひっくり返していたので、ここ最近の実務と突き合わせて一旦整理しておこうと思います。

 

国内の拒絶理由対応とは

 国内の拒絶理由対応とは、特許実務で、主に日本の特許庁への特許出願に対して、届く拒絶理由通知に関するものですね。

 大体新規性、進歩性、明確性辺りに意見書とか補正書で応答するやつです。

 実は、ここ数年で企業知財から、事務所知財に戻っているのですが、結構話が違う部分もあり、確認も含めて整理しておこうと思いました。

 

進歩性について

 進歩性については、久しぶりに読み直す研修資料を見ていて、まず頭をぶん殴られた感じになりました。

 まあ、基本からすれば当たり前なのですが、やっぱり審査基準の大切さですね。

 実務的には、とりあえず件数をこなさないといけないので、本願と引用文献をざっくりを読んで、本願独立項と、引用文献の明細書全体との差異点を補正する辺りから探したくなるのですが。

 拒絶理由通知は、結構ざっくり書いてあるのですけど、元審査官経験者の人の話からすると、内部ではやっぱりしっかり審査基準通りに一致点や相違点を上げてやっているそうで、この辺も結構意識しながら、可能性は低いとしても反論だけの案を考える辺りも結構重要そうでした。

 いわゆる論理付けとか、効果とか課題が違うとかのあれですね。

 

 なんかこの辺は、企業知財の際は、自社で開発してた技術なので、明細書の記載というよりは、なんか大体昔からの開発経緯に関係する技術や課題の細かい箇所を主張して、多分良く分からない審査官に通すみたいなパターンが多かったのですが。

 この手は、当然通常事務所側では使えないわけで、拒絶理由通知ベースで、進歩性なんだけど、どりあえず引用例との記載の細かい違いを探して、そこを違いの出そうな効果の主張でコメントを出すみたいなのが一番楽なパターンになっていました。

 なんか近年、進歩性の基準が下がったのか、ちょっとの違いでも結構いけてしまう感じなのですよね。

 でも、基本に立ち返ると、やっぱり審査基準に戻って審査官の判断を追いながら、怪しい箇所は反論案として挙げるみたいなのは結構重要そうでした。

 

補正について

方法関係の減縮補正がつらい

 補正については、とりあえず実務だと、方法関係のクレームの補正でめちゃくちゃ詰まっています。

 例えば装置から書き換えた場合は、頭に「~によって実行される処理方法であって、」みたいな但し書きをつけるのはもちろんなのですが、例えば、独立項で処理の順番が構成1>構成2>構成3で確定しているものがあったとします。

 

 ここに従属項の構成で処理の順番が、構成4>構成5で確定しているものを足す場合、構成1-3の間と、構成4-5の間とでは順番の前後が確定しているのですが、構成1-5の間だと順番が請求項上良く分からない場合が凄いつらいです。

 本当に不定であれば、構成1ー3段階を備え、構成4-5段階を備えるみたいな感じで2段階に補正してしまえばよいのですが、明細書上でどっちかに定まる場合は、構成1>構成4>構成2>構成3>構成5みたいに補正しないとダメ出しが出たりします。

 

 この辺は、自分が元の明細書を書いたわけではなく、拒絶理由対応だけで回ってきた明細書の場合、案件によっては結構読み込まないとダメだったりするので、いまだに慣れませんね。

 また、これに関連して、構成を追加したり入れ替えたりした場合に、挿入した構成が初出の名詞を含んでしまうような場合(前記を外す場合)は、当初の初出の個所の名詞に関する説明も追加してあげないとダメなようです。

 超めんどくさいのですが。

 

独立項に書き下す場合の追加位置が難しい

 これは、独立項である請求項1を、複数の従属項で減縮した複数の独立項を追加する場合の位置ですね。

 今までは、請求項1の位置に、追加した複数の請求項全部を追加していたのですが、例えば、独立項が装置の場合は、1個だけをもとの請求項の位置にして、残りは、装置クレームの一番最後に追加したほうが良いパターンのほうが多いようです。

 具体的には、結構後ろのほうの従属項を追加した場合で、本来の従属項である請求項2とかとマルチ関係にした場合に、重複してしまうような場合は、同じ分類のクレームの一番最後に完全独立でつける感じのほうが良いようです。 

 まあ、国内では、マルチマルチの請求項が禁止になったので、これは徐々に減っていくのかもしれませんが。

 

 関連して、従属項の請求項7の内容で独立項を補正した場合、請求項7が従属で請求項5,6の内容を含んでいる場合、請求項5,6は削除したほうが良いようです。

 今まで重複する内容は、読み替えられると思っていたのですが、どうも実際には構成が2つで読むらしく、ダメなようでした。

 具体的には、前記の請求項5で、送信部みたいな構成があったとして、この内容を独立項に追加した後、独立項に従属する請求項5をそのままにしてしまうと、請求項5では、送信部が2つある構成で読まれたりするようです。

 

 これには別のパターンもあり、例えば、請求項7がもともと請求項1にしか従属していない場合で、請求項1に構成に追加した場合には、別の問題が出てきます。

 具体的には、請求項1+7OKでも、もともと請求項1に追加していた請求項2+請求項1+請求項7の構成は、存在しなかったため、請求項2は削除することになってしまったりするようです。

 複雑すぎてイミフなんですが。

 

補正要件の自明な事項

 補正要件の話で、忘れてた内容がありました。

 補正案を考える際に、一番楽なのは、明細書の補正用に書かれている段落の構成をそのまま持ってくるタイプだと思います。

 ただ審査基準的には、「当初明細書等の記載から自明な事項OKで、こちらはあまりチャレンジしたことがなかったのを忘れていました。

 より拒絶理由や引用文献との差異が出る形の文言に変えるのは、案件によって、特にそのままだとダメそうな場合は特に重要の気がします。

 

明確性について

 明確性については、あまり有用な気づきがなかったのですが、実務で面倒くさいところだと、外内案件だったでしょうか。

 明細書が日本語に翻訳されているせいもあるのですが、日本語なのに意味が分からない内容になっていて、そこが普通に審査官に指摘されてくるタイプです。

 

 当然こちらで読んでも意味が分からないのですが、ふわっと解釈して顧客に補正案を元の言語で送って許可を取ってから再度日本語で特許庁に提出したりすることになります。

 国が変わったくらいでは、物理法則や科学技術が丸っと変わるはずもないので、本質的には言いたいことは変わらないはずなのですが、手掛かりが図面やグラフしかなかったりして、誤訳もあったりすると本当につらいです。

 対策としては、引例として挙げられている中で理解しやすい日本語のものとか、あればファミリーのものをしっかり確認するとかでしょうか、

 どちらもないと本当に無理なんですけど、他の人はどうやってるんでしょうね・・。

 

まとめ

 まあ、色々あったのですが、ちょうど面白い時期でもあるともいえるかもしれませんね。

 

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kuroneko

とある企業の知財部で働く一応弁理士です。 国内特許系メインの日々の業務とか、試験対策ネタとか書いています。 受験時代は某L社系列の某B,M講師をメインに習っていました。 Copyright (C) 2010 - 2017 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
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